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ウオラトモm

二次創作であるかどうかすら謎です。


在る所に巨万の富を築いた男がいた。
男が如何にして財を成したかと云えば、それは強奪である。彼はただ何者にも勝る圧倒的な力によって他者を蹂躙することを厭わない、悪辣にして残酷の人であった。
しかし、彼の行為が咎められることはなかった。何故なら彼の暴力の矛先は、民衆を千辛万苦へと陥れる暴君に限られていたからである。想像を絶する苦渋から解放された人間は、ただ平身低頭して彼に感恩の意を示すばかりであった。彼は正義という大義名分の下に暴力の刃を振り翳し、その対価として超法規的に金銭を得ていた。
男には同志があった。ただし彼らの関係は長年甘酸を共にし続けた旧知の仲と云った類のものではない。男は報酬を与え、その者達は力を貸すという、利害の一致のみによって彼らの縁は成り立っていた。彼らは生への渇望のために極悪非道に与することも辞さない、飢えたけだものであった。
男には家族があった。彼は本来天涯孤独であったが、長年子宝に恵まれることの無かった老夫婦に養子として引き取られ育てられた。彼にかのけだものらを懐柔させるための初期投資を与えたのも、彼の義母であった。
そもそも男は人の子ではなかった。彼の生命の起源は、桃源郷に自生し不老長寿を齎す植物の果実にあった。遺伝子の突然変異が植物であるそれを高度に思考する動物へと変貌させたのか、はたまた人智を超えた生命力の迸りの多世代間における濃縮の反復がそれに意思を与えたのか、それは誰にも知る由が無い。また、常世の存在であるはずの彼を内包した果実が結実したのち、如何にして異次元と虚数軸による隔絶を超越して現世に現れ出でたのかも同様である。しかし、それは確かに現実世界の河川を漂流していた。
この尋常ならざる事態を発見したのが、現在男と共に贅を尽くした生活を送る彼の義母である。当時彼女はそれを食用として持ち帰ったが、彼の義父の鉈によって果実からこの世の者で在らざる男が取り上げられた瞬間、夫婦の魂は将来の栄耀栄華のための奸計に支配されていた。
全ての始まりは、男の義父が山へ芝刈りに、男の義母が川へ洗濯に行ったことにあった。
  1. 2008/09/18(木) 22:51:46|
  2. 一次創作
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