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コズミック・ジョーカー(清涼院流水)

コズミックとジョーカーは流水大説。なんじゃそりゃ。


私はミステリを読むとき、精々曖昧に予想を持っておく程度で、真剣に推理によって作者と知恵比べをしようとか思う事はほぼ無い。
なぜならその作品のジャンルに拘らず、物語を物語としてしか捉えていないからだ。この限りにおいては、先の展開の予想(推理)はある意味自らネタバレを作成する行為であり、ひたすら無心で読み進める事こそ物語の面白みを最大限享受する方法であると考える。
故にいつも過剰に期待をかけて読んでしまうが、ほぼ全てのミステリは現実レベルでの解決しか見せない。こんなにも意外な犯人が鮮やかなトリックで人を殺してたよーとか言われても、ふーんとしか思わない。そもそも何故謎は殺人方法の中にばかり隠されているのか……。世界の謎はもっと色んなところに潜んでいるぞ。

そんな中、コズミックとジョーカーは通常の予想とは別の次元にある解決を見せてくれた。「あなたを犯人です」を三次元的解決とするなら、コズミックは四次元、ジョーカーは五次元レベルだと言える。
少なくとも私が今まで読んだ小説の中で最高傑作だと思うし、一番好きな作品である事は間違いない。サンプル少ないから大した意味は無いけど。
面白いものを書こうなんてもんじゃなく、作中でも言われてるような四大ミステリの後に続こうという、頂点に立とうとする気概が感じられ、そのチャレンジ精神に触れるだけでも幸せな気分になれる。

読んでる最中は至る場面で笑った。ただし、笑うと言ってもギャグで笑うのとは違い、予想だにしない展開に対して楽しさを覚える事によって笑いが生まれるのだと気付いた。
ギャグの笑いも含んでいるから気付けなかったが、カブトボーグなんかで発生する笑いもこの要素を含んでいたのかも知れない。


JDCの皆さん

探偵の癖に何故か全員必殺技を持ってる。
一向に筋道立てた論理的思考などしやがらず、突然領域の外から訪れる天啓とか勘とかで真相に至ってしまう。良くて何の意味もなさそうな言葉遊びが関の山。
「食らうがいい……『絶対に解けない密室の謎!』」
「甘いな……『理路乱歩(りろらんぽ)!』血流増加により脳は活性化する!」
「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺!!!」
「トコトコトコトコトコトコトコトコトコトコ!!!!」
(ドッギャーン!)
イメージとしてはそんな感じの展開。どんなミステリだ。

そしてピラミッド構造の第1班~第7班やら、A~Kに加えて世界に7人のS探偵やら、推理力の数値化序列化は否応無しに燃える。幽白かよ。第1班の凄まじい存在感を放つ探偵の推理力の大きさ描写(非推理描写)だけご飯3杯。

・鴉城蒼司
才能よりも経験が物を言ってる国内最強探偵。
警察に加えて巨大探偵組織のJDCが存在する中で、電話による安楽椅子探偵は一日休む事すら許されない状態だわ、第1班の探偵が日本各地で凶悪事件の捜査に奮闘してる状態だわ、明らかに現実世界とは犯罪の量も質も桁違いのこの世界怖い。計画殺人だけで人類滅亡しそう。

・九十九十九
事件を推理小説に見立てた場合の作者の視点から事件に言及出来る探偵神いわゆるゴッドオヴディティクティヴ。「5ページ前からいました」なんかの言動からして、単なる天啓授かってる人ではなく、ガチのメタ探偵らしい。
目下神風特攻中の大の男が素顔を見ただけで失神、ブラウン管越しの美し過ぎる会釈で16万人が失神など、その美貌はほとんどギャグの域。

・龍宮城之介
言葉遊び人。ぶっちゃけこの人の推理はほぼ全て単なるこじ付けで意味なんて無い。
言葉遊び大好きな作者の分身は、濁暑院溜水じゃなくむしろこっちなんじゃないかと思える。

・霧華舞衣
「ありえないものを除去して残ったものは、どんなにありえそうに無いことでも真実に違いない」って言葉に基いているみたいだが、消去推理は難しいを超えて無理があると思う。真相を候補に上げるのが推理の目的な訳で、候補の中に真相を含められる時点で消去などほぼ必要の無いステップでしかなくなる。極端な話常にトンネル効果に辿り着きかねない。
結局全ての可能性を上げたと確信出来る後期クイーン問題無視のメタ視点があるからこそ成立する推理なんだろう。

・氷姫宮幽弥
指貫グローヴ……。流行に乗り遅れたファッションがオタファッションだから、流行に敏感な人を未来から見るとそう見えるのは仕方ないが、なんか不憫だ。
文章中の名前の出現回数ランキングと平均出現回数ランキングでともに19位だった人りうことに超越的な力が働いているとか言い出した時は気でも違ってるのかと思った。未だに意味が分からない。

・天城漂馬
劣化九十九十九。発動確率が低い。

・九十九音無
劣化九十九十九。発動するけど分かりにくい。

・ピラミッド水野
名前がどっからやってきたのかが一番の謎。九冬刑事の名前が珍しいと言われる中、JDCの人々だけこのようなDQNネーム連打なのに誰にも触れないのは何か意味があるのかと思ったけど、別に無いらしい。
この人の事件は総代が絡んでいる以上、時間的制約がかなり厳しそうなんだが……。


コズミック

あとから考えると流の部分の無意味さと言ったら無いが、まるで意味があるかのように見せかけること自体には意味がある。作中作である事を公言している以上、厳密には何の問題もなくフェアだろう。

絶対不可能殺人描写の連続は、回を重ねるごとに真相に対する期待が高まり、またあらゆる殺人に実現可能性を見出せるという作者の自信も感じられて、読んでて楽しかった。この時点では全部同種の事件に見えて実は個別トリックが違うぐらいしか解決の手段が想像出来なかった。

JDCの人々わいわいがやがや推理する傍ら、淡々と人が死に続ける様はいっそシュール。一瞬でも目を放せば密室と見做されて殺されるのだから、回避手段は屋外かつ集団でお互いを見詰め続ける事ぐらいしか思い当たらない。しかしそれでも全員が瞬きした瞬間に人が死んでそうだからやっぱりやっぱり回避不可能に思える。
真相からすればそんな事を考える人は端から安全圏にいたわけだけど。しかし7万人の信者数をもってしてもコンサート会場やら野球場を占拠するのは難しくないか。

ジョーカーの教訓からしても犯人が誰であるのかはすごくどうでもいい。ラストのM→H→Sの変遷はなんだあれ。どうも困った時は数百年前からの因縁にしておけみたいな空気を感じるが、あんまり歴史に興味ない人間からすると、それだけですげーなんて思えない。もうS=作者=清涼院流水でいいよ。


ジョーカー

執拗に繰り返される、物語が虚構で登場人物がそれに半ば気付いているような描写。
通常のミステリに必ずと言って良いほど出て来る「推理小説じゃないんだから」みたいな表現は、見かけるたび、現実じゃないんだからめったなこと言うもんじゃないと思っていたけれど、ここまで露骨にアンチミステリだかメタミステリをテーマにしていると、むしろ当然の表現に思える。だって実際虚構なんだから。
残りページ数で今から事件解決するかどうかわかるだろ? とか言い始めるのもすごい笑った。
登場人物(濁暑院)が書いている作中作を読んでいるという前提がある以上、知りえない情報を描写していたら矛盾なのではないかとか、その場合伝聞や想像や代筆で矛盾は解決出来るのかとか、そもそも嘘を書いて読者を欺こうとしているのかとか、疑念は絶えず、文章の持つ意味が非常に大きい。

このメタ強調により、絶対に辿り着けない真相はとりあえず読者=犯人と予想しておいた。幸い「僕」が「君」に語りかける形で物語に登場してるし、お前が読むからこいつらは死んだんだ、みたいな感じで。ほぼ考える事放棄してるだけだけど。

そしてそんなくだらない予想の遥か斜め上を行くこのオチが大好き。さんざどんでん返しに次ぐどんでん返しで翻弄した上で、そもそもミステリってなんなんだと思わせるような超越的かつ人を馬鹿にするにも程がある解決。読了後十数分ぐらい笑いが止まらなかった。
一応魅山犯人説ではそれなりに納得したのにこれ。作中でも言われているが、ここまで結末が二転三転し続け、登場人物の中で犯人扱いされた人間よりされてない人間の方が少ないような状態にまで陥ると、もはやあっと驚く意外な犯人など存在せず、誰が犯人でももうどうでもいいよ状態になることが分かった。その時点の推理での整合性とか考える気力なんて微塵も発生しない。

鎧の密室は直感的に絶対不可能密室殺人だと思ったらほんとに解かれないままだった。
コズミックのスカイダイビング密室とか子宮内密室でも同じ印象を受けたことから、こちらの「そもそも記述が嘘であれば良い」という不可能を可能にする方法論を適用してみる。
こっちも濁暑院の文なのでその点は問題無いが、この場合登場人物全員が仕掛け人である必要もあり、非作中作部分で心理描写の描かれてるJDCの人々も絡んでいる以上、非常に苦しい。
いや、そもそもジョーカーは全部嘘で、華没が誰にも読まれてなければ問題は無いのか。1500P超の話の75%ぐらいまで嘘八百とか、そこまで無茶苦茶でいいんだろうか。
これだと幻影城殺人事件が密室連続殺人に入ってなかったのがまた謎だし、コズミックオチを引っ張り続けるのもどうかってところ。
あんまり現実的な解決を求めるのも無粋な気がする。

作中直接書名が登場する本の他、ミステリ名作のオマージュは大量に含まれてそうなので、それを楽しむ為にももうちょっと本読みたい。
まずはドグラマグラしか読んで無いから四大ミステリからか。あれは3大奇書と言う割には普通にミステリとして楽しめたから、他のもそんなに身構えるべきものでもないと思って良いのかな。古文は斜め読みだったけどな。


読む順番

清涼in流水の読み方に意味があるらしいが、さっぱり分からない。
コズミック流:濁暑院著・1200年密室伝説第4部(~1993年10月24日執筆)
ジョーカー清涼:濁暑院著・華麗なる没落の為に(1993年10月25日~1993年10月31日執筆)
コズミック水:密室連続殺人事件の20件目以降(1994年1月7日~の非劇中作)
で、一応時系列は正しくなるが、だからと言ってそれがどういった効果を生んでいるのか……。
割とバラバラに読んでも時系列整理は勝手に脳内でされてしまうから、読む順番で読後感を大きく変えるってのは難しいんじゃないかな。螽斯と蒼也のくだりを楽しむ為に、ジョーカー→コズミック水でさえあれば、別に意味は変わらないのでは。



あと言葉遊び大好き的に考えてまだサブタイとかに暗号が隠されてるんじゃないかとか、まだ何かありそうな気はする。
もう分からないことだらけだから他の作品で傾向を掴んでからもうちょっと考えるべきか。
とりあえず商魂逞しくも作中で盛大に宣伝されてるカーニバルと彩紋家事件と、公式二次創作ってどうなんだと思ってたらオススメされてたから九十九十九は買った。安かったから全部新書版。カーニバルは文庫版で大幅改稿あるみたいだからそれもいずれは……。
でもそれ以前に買った積読がまだ溢れ返ってるからだいぶ後回しになりそう。
  1. 2009/07/18(土) 23:15:40|
  2. 小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

コズミックジョーカー面白いよね!

ちなみに鎧の密室に関しては読んだときの推測は

コズミック水で幻影城で殺人事件が起こる→つまり幻影城の人たちはM教信者→つまり幻影城殺人事件もM教が起こしたもの→もう探偵が直接見聞きしたものしか信じられない→鑑識がX線で調査したらしいけどその調査結果も信じられない→巧妙に甲冑を分解したんじゃね?

だった。
しかし、清涼院のすごいところは普通のミステリなら推奨されるべき「なんとか現実レベルまで事件を落とす」という行為が上等な料理に蜂蜜をぶちまけるがごとく行為に感じられること。

ジョーカーがM教の起こしたことなら最後の「だれでもいい」は「MだろうがHだろうがSだろうがぶっちゃけどうでもいいよね」というメッセージだという解釈も可能。

つまりコズミックもジョーカーも「現代のMさん(茉緒あるいは魅山)が犯人だと思われたけど実は過去のMさん(松尾あるいは紫)が犯人と見せかけて真犯人はHでありS」というまったく同じ構造をもった同一の事件だったんだよ!

ぶっちゃけこじつけだけど、清涼院ならそれを本気で意識しててもなんの不自然さもないあたりが清涼院。



あと、ここまで書いて「宇宙ヤバイのコピペ改変して清涼院ヤバイのコピペ作れそうだなぁ」とか思ったけどググってみたらニコニコ大百科の清涼院流水の記事がそれだった。
ヤバイ。清涼院流水ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
  1. 2009/07/19(日) 14:56:26 |
  2. URL |
  3. 蝉の(ry #-
  4. [ 編集]

何がヤバいって清涼院の話になると蝉の(ryさんの目の色が変わるのもヤバい。


なるほど、色んな見方が出来ますね。
ジョーカーはまだまだ考察の余地がありそうですが、犯人が誰かも不確定なら地の文が真実であるかどうかすら不確定な状態で、虚実見極めながら再読するには約900P(文庫版)は如何せん重いです。よくこんな膨らませたな……。

そして確かに読者が考えるような解釈は、こと闇合に関しては、全て想定した上で書かれてそうに思えて怖いです。清涼院先生は10次元と11次元の狭間から我々を見下ろしていて、作品の意味は常人の理解を超えていなければいけないような気さえします。

うん、かなり信者の域入ってる。
まだまだ未読の清涼院作品がこの世に溢れているのが幸せです。
  1. 2009/07/19(日) 21:01:49 |
  2. URL |
  3. 仮称 #-
  4. [ 編集]

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