なんだこれ
「H先生、大変です」
「どうしたW君。いや、言わなくてもいい」
「では言いません」
「…絶海の孤島の古い洋館の鍵がかかった部屋で死体が発見された。しかもその死体には出血も、殴打の跡も、絞首の跡も、毒物反応も何もなく死因すら分からない。手がかりといえば死亡推定時刻に現場から逃げ出す20代の女を見たという目撃証言だけ。そうだろう」
「その通りです。何故分かったんですか」
「私には読心術が備わっているのだ。神の啓示による。」
「そうなんですか。すごいですね」
「すごいだろう」
「では事件の真相もその能力で分かるのですね」
「いやそれは分からない」
「そうですか」
「しかし、それとは関係なくその事件を推理することは出来る」
「本当ですか」
「まず、その鍵がかかった部屋には実は隠し扉があるのだ。掛け軸の掛かった部分を押すと壁が回転する。だから扉の鍵には何の意味も無いのだ」
「なるほど。では被害者はどうやって殺されたのですか」
「現在の科学技術では絶対に検出されない毒を盛られたのだ」
「それなら分からなくても不思議はありませんね。しかし何故先生にはそんなことが分かるのですか」
「何故なら犯人は私だからだ」
「でもあなたは男性だし40代半ばぐらいにしか見えない」
「実は私は変装の達人で性別、年齢、身長、体重を問わずあらゆる人間に成り代わることが出来るのだ。この通り」
「おお、20代女性になった。すごいですね」
「すごいだろう」
「しかし私は既にあなたが犯人であることを知っていました」
「何故分かったんだ」
「部屋に落ちていた毛髪をなんとなくDNA鑑定したら先生のものと一致していました」
「そうだったのか」
「あなたを逮捕します」
「しかし話はそう簡単には行かない。私はあそこに立っている私の友人に唆されてやったのだ。だから私には罪は無い。ちなみに彼は中国人でサイコキネシスを使う」
「そうですか。では彼を警察に突き出しましょう」
「そうだな、では私が彼を連れてこよう」
「お願いします」
「…」
「どうしました」
「すまない、どうやら彼は私の友人の双子の弟で、兄の方は既に海外へ逃亡したらしい」
「そうですか。ではこの事件は迷宮入りですね」
「そうだな。諦めよう」
「お疲れ様でした」
「また明日」
- 2008/10/01(水) 09:36:33|
- 一次創作
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