FC2ブログ

ヘドロ宇宙モデル(泉和良)

タイトルからして、今度こそSFなお話だろうと思ったら、やっぱり無職男と電波女がなんやらかんやらする話だった。
確かに普通にSF書いても、とりわけ特徴があるわけでもなしに、きっと他の中に埋もれるだけの結果になるに違いないから、それよりは特殊な経歴を生かして、その人生に即した文を書くほうが、リアリティという点でも意味があって、それこそが唯一の生き残る道という事なんだろう。

と言っても今回はSF要素も含んでいる。全体としては恋愛と純文学とSFがない交ぜになってる印象。
それに前回までのように登場人物がそれほど病んでない。主人公は精神安定剤飲まないと自我が保てないような明らかな病人ではなく、ある程度分別を弁えてるちょっと疲れた社会人ぐらいの感じだし、ヒロインは常に手首を切り続けてる重度のメンヘラなどではなく、ちょっと変わったところはある女子高生と極端に消極的なOL。
かなり地に足が着いて、一般にも受け入れやすくなっていると思う。だからこそ突き抜け感が足りずに誰を対象としてるのか見失ってると言えなくも無いけど。

純粋に面白いと感じたのはやっぱりSF部分。宇宙内での通信における光速度による距離的隔絶をシミュレートする事で、それを時間という重みを持ったもので体感出来る宇宙ボトムメートルのアイディアは、フリーソフト作家の強みが十二分に出ていた。実際こんなソフトあったら使ってみたいと思うもの。きっと普段こんな事ばっかり考えてるんだろうなー。

終盤に作者が登場したところでは、現実世界から作品内世界へのメタ構造を利用した展開が繰広げられるのか、主人公が作者じゃなかった事はその伏線だったのかと思い、おおっと思ったけど、即座に主人公に否定されてしまった。
とは言えそれを関連付けて考える事自体には意味はあると思う。作品内世界の中にスフィアがあって、スフィアの中に宇宙モデルがあって、彼女の中に宇宙モデル”猫道”があって、現実世界から彼女に干渉できない祖父はYに呼びかける…。めんどくさくなったので考えるのをやめた。


一つだけ言える確かな事は、毎度お馴染みのコンビニのパンを常食する生活は贅沢極まりないという事だね。暇はいくらでもあるんだから自炊すれば働かなくても生きていける期間が、主人公の見積もりの2倍ぐらいにはなってたろうに…。勿体ない勿体ない。
  1. 2009/06/02(火) 23:18:17|
  2. 小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<ノイタミナ | ホーム | 音楽は永遠に増えない>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pseudonym.blog94.fc2.com/tb.php/414-b76e8d8d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)