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六枚のとんかつ(蘇部健一)

もうランダムセレクトは中止しよう。
私の求めるものはだいたいメフィスト賞の中にあるんだろうと思った次第。

六枚のとんかつはアホでバカで下品なミステリ。
基本的にはほぼゴミクズと言って差し支えない。ただこれが賞を獲得して物議を醸した事には意味があると思う。逆説的だが、価値あるものに賞が与えられたのでなく、賞を与える事によって価値が生まれた感じ。

私は「くだらねええええ」ってタイプのギャグが結構好きなんだけれど、その「くだらなさ」の中にも美学と呼べるものがあって、それがこの作品には今一つ不足していると感じる。
全体的に真面目な部分とふざけた部分が混在していて、むしろ真面目なミステリのギミックのお粗末さに対する言い訳としてバカミステリであることが用いられているところが大きい。
やるならもっと徹底して馬鹿であるべきなのに、突き抜け感が足りてないんだ。

とは言ってももちろん、その中には普通にクスリとできるネタや感心させられるトリックもあった。
以下区切りがあって書きやすいから一応順を追ってひとことずつ。

FILENo.1 音の気がかり
なんで空耳アワー前提なんだ。確かにこれは名作だと思うけど対象狭いな。
あとバックします=ガッツ石松は投稿特ホウ王国で扱われてた覚えがある。どこが特報なんだろうか。

FILENo.2 桂男爵の舞踏会
姑獲鳥を20分の1ぐらいに圧縮したようなお話…なのか? 灯台下暗しトリックが好きらしいね。

FILENo.3 黄金
宝石店から盗んだ金を宝石店に隠す=盗んでないのと同じ、はちょっと面白かった。
金庫自体が金ってトリックは好きだけどなー。通過点なのにそこに辿り着くまでの描写がひたすらにくどく感じた。真のオチだとまた回収に行かなきゃいけないリスクあるじゃないかとか、別に頭に落下しなかったら解決しなかった訳でもないと思う。
盗たんだものを隠し通したまま刑期を終えたら、罪を償っている以上、回収した時に問われるのは占有離脱物横領罪になるのかな。それを敢えて警察に届けて持ち主が現れた時、1割を請求する権利が得られるのかどうか気になる。

FILENo.4 エースの誇り
体重計って勢い良く乗れば20kg位ぶらせるんじゃないかと思ったが、実際やってみたら高速で動く文字盤の文字なんて読み取れなくてよくわからなかった。

FILENo.5 見えない証拠
海岸には見慣れすぎて誰も気にも留めないレベルでコンドームが落ちてるなんて初めて聞いたわ。一体夜の海岸では何が行われているんだぜ。

FILENo.6 しおかぜ⑰号四十九分の壁
アイディアは面白いんだけど、この地図を見て誰が四国だと思うんだろうか……。まさか四国の端から橋まで5時間で到達出来ないなんてのも夢にも思わないし。
この話に意図通りに騙されようと思ったら、まずオーストラリアの形と四国の形を曖昧にしか知らず、なおかつ四国の鉄道事情に精通しているという無茶な前提が必要になるはず。そんな人いるのか……? もうちょっと地図が適当だったらよかったのかな。
それにしても時刻表が読めない私にとっては頭が痛くなる話だ。トラベルミステリってこんなのなのか。

FILENo.7 オナニー連盟
バカミステリという本作のテーマに最も迎合するお話だと思う。これを削るとか何考えてんだ。それだけで作品の持つパワーは4割ぐらい減衰してるよ。
主人公バカだなーと純粋に笑える。このコピペを思い出した。

FILENo.8 丸の内線七十秒の壁
東京怖いと思った。東淀川~新大阪間の比じゃないんだろうなー。
と思って調べてみたけど、googleマップ上ではどっちも400mぐらいに見えた。駅間最短はこの佐世保中央~中佐世保駅間で200mぐらいらしい。

FILENo.9 欠けているもの
分かったけど、だからなんだという気はする。
両腕不在は想像を促す作者の意図じゃなくて、単に発見されてないだけなんだってね。芸術って往々にしてそういうところがある。

FILENo.10 鏡の向こう側
最後の絵の意味するところがよく分からない。コアラと同じフォーマットで描いてくれても良いじゃない。

FILENo.11 消えた黒いドレスの女
女装癖だと思ってたよ。嫁を燃やすなんてとんでもない。
腹の下で死ぬのも腹上死じゃないのかな。

FILENo.12,13 五枚のとんかつ・六枚のとんかつ
タイトルになってるだけあって面白い。みんなから誤差の範囲で少しずつ貰えば一人を幸せに出来るっていう、宝くじの時にしたのと似たような話。
けっこう現実世界でも応用効くんだよね。紙幣で同じことをやれば、3分の2以上残ってる場合新品と交換してもらえるから……。犯罪だし無理だろうけど。

FILENo.14 「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」を読んだ男
鰻の串は静摩擦係数>動摩擦係数って話で、大きさ的につっかえてる場合には適応出来なさそう。というか引っ張らずに押すべきだと思うよ。また出れなくなる未来が見えている以上、明らかな悪意を感じる。

最後のエピローグ
このネタ相当気に入ってるな。

ボーナストラック 保険調査員の長い一日
全体にも言えるけど、推理クイズブック臭が強い。
  1. 2009/06/16(火) 08:17:19|
  2. 小説
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