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妄想乙にも程がある

忍☆忍70ミリ以降あたりの妄想を発作的に書きたくなったから勢いでぶわっと書き殴ってたらこんなことになってた。もうちょっとちゃんと書けばちゃんとなる様な気がしないでもないけど垂れ流し。
無論誰であっても読むの非推奨だよ!

「剣圧スター!」
おおよそ斬撃が届くべくも無い距離で暴れ回る変蝶々に相対して、主人公は天に翳した包丁ブレードを振り下ろす。ただ空を切るに過ぎない筈の刀身は、本来目に見えぬ”圧”を蒼白の光体として発射し、それは正確に変蝶々の顔面を真っ二つに割った。瞬く間に蝶々の集合体は大気中に雲散霧消する。
ななこはその様子を漠然と眺めて、大きく欠伸をした。まだ夜が明けて間もなく、薄灰色に霞んだ街は、静寂に包まれている。もう初夏に差し掛かろうかという時節の、朝露を孕んだ空気は、ななこの肌の表面を微かに撫でる。しかしそれはななこの眠気を殺ぐには幾分か冷涼さを欠いていた。そもそも人間が活動を起こすには少々早過ぎる時間帯である。
ななこが口に宛がった手を下ろすのとほぼ同時に、主人公は振り返り、ある程度距離を取っていたななこに向かって意気揚々と駆け寄ってきた。
「なあ、今の見てたか? 躱されなかった上に技の名前覚えてたんだぜ! すげーよ、奇跡だろこれ。完璧に惚れ直しただろ?」
エヴェレスト山頂とマリアナ海溝底ほどのテンションの落差に、どっと疲労感を覚えて、そもそも惚れていないと訂正するのも億劫になった。
「よかったわね。私は見てなかったわ」
目の端に浮いた涙を指で拭いつつ、深い意味もなく嘘を吐いた。
「なんだよ! 凄かったんだぞ! 飛んでった斬撃が変蝶々に当たった瞬間大ゴマにドン! って感じで」
勢い付いて自分の半径五十センチメートル以内に入ろうとする主人公を片腕で抑止する。視線を早暁の空に移すと、そこには低位置から自分達に向かって柔らかい光りを発し、長い影を成す太陽。それはきっと昼頃には灼熱の光線で肌を焦がす大敵と化しているのだろう。こんな調子で一日体力を保持出来るのかと、小さな懸念を抱く。
「くそー……いいか、次は絶対見てろよ! きっと一瞬で惚れ直してフォーリンラヴして下僕を恋人に格上げしたくなってプロポーズを受諾したくなるぐらいの――」
主人公の主張がななこの腕の力を超えるのを感じた。全て面倒に思う。
ななこがパッと主人公を抑え付ける手を放すと、主人公は自分の方に倒れかける。その力を利用する形で、離した腕を主人公の顎目掛けて突き上げた。
「ぐっ……!」
カウンター気味のアッパーカットとなった攻撃は主人公の脳を軽く震盪させたに違いない。
「さ、帰るわよ」
顎を押さえて蹲る主人公を一瞥した後、ななこは踵を返して歩き出した。主人公は暫くその場に留まっていたが、ものの十数秒の内に症状を回復させたようで、直ぐに背後に走駆の音を聞く。ななこはそれで主人公の存在を確認すると、まるでゾンビだと思いながら、口を開く。
「なんか……つまんないのよね。あんた最近強くなり過ぎなのよ」
「強くなって悪い事なんて無いだろ? それで俺はお前を守れるし、お前は何もせずに変蝶々の数を減らせるし」
「強過ぎるのも考え物だわ。たまは喉の一つでも潰されるぐらい苦戦すればいいのに」
「何言ってんだ、そんな事になったらお前への愛の言葉も囁けねえじゃねえか!」
「そういう歯の浮くような台詞を吐く口を塞げたら多少はマシな下僕だと思えるってことよ」
その後も主人公は何事か喚いている様子だったが、完全無視を決め込みさっさと歩を進めた。
光を反射して輝く白露を纏った街路樹と、無機的に佇立する電信柱の繰り返し。もうあと1時間ほど遅ければ、学校へと通う子供や、会社へと向かう社会人も現れてくるのだろうが、こんな時間に見かける人間はごく限られている。例えば今視界に唯一映っているのは早朝のジョギングに精を出す中年男。
彼らは悉くすれ違い様にこちらを頻りに気にするように視線を彷徨わす。纏わり付く男の視線に対し反射的に覚える嫌悪感を消すことは出来ないが、その意味するところが別にあることは分かっている。制服の少女とそれに追随する刀を背負った黒装束の少年。
偶々変蝶々に出くわした時ならまだしも、クロサキ医院に抜け殻を置いて逃げる変蝶々を追った時などは、こうして奇異の目を避けることが出来ない。特異な趣味だとでも思われているのか、それだけで通報するような人間はまず無く、気にしなければそれまでだが、やはり多少の気恥ずかしさは沸いてくる。主人公はその範疇では無いとは言え、忍者である自分と行動を共にしている以上、もう少し忍ぶべきでは無いかという考えが頭を過る。
「そうだわ!」
ななこは両掌を音を立てて合わせて、主人公の方を振り返った。体の勢いに伴ってスカートが揺れる。
「あんた、今度から脱皮しないで戦いなさいよ。そうしたらちょっとは面白くなるわ」
「な……無茶言うなよ! 刀は皮の中に入ってるんだぞ! よくわかんねえけど」
「あんた刀より徒手空拳の方が得意なんでしょうが。何の問題も無いじゃない」
「いやいや、下僕らしさが足りねえと力出せねえんだよ! 流石にキツいってそれは!」
「なら駄目そうな時は私の靴の裏を舐めなさい。綺麗に泥が落とせて私の気が向いたら助けに入ってやるわ」
「戦闘中にそんなプレイしてる暇ねえよ! ていうかそこまでして気が向いたらって何だよ!」
「そうねえ、あんたの唾液が付いた靴なんて履きたくないものね」
「おい、論点ずれてんぞ!」
「うるさい黙れ。ほら」
ななこは主人公の言い分にはほぼ聞く耳持たず、掌を差し出した。
「何だよ?」
「アヒルの錠剤。持ってるんでしょう?」
「待て、冷静になろうぜ。だいたいそれで俺がやられたりしたらお前にとっても――」
「はやく」
ななこが有無を言わさず無表情でそう言い放つと、主人公は彼女の本気を悟ったようで、渋々ながら襟の合わせを探ってアヒルの頭の付いた筒を差し出した。
ななこはそれをぶん取ると、また踵を返して歩き出した。
「もちろん、セルフ脱皮したりしたら承知しないから」
「マジかよ……」
手にした錠剤を弄びながら、心なしか重い足取りの主人公を寄せ付けぬ歩調で進む。
一端の忍者として、下僕が自分よりも遥かに強大な力を有してしまっている事に気後れが無い訳では無かった。いよいよとなれば総体的な有利は向こうにある事は否定出来ない。こうして精神的な見地では主人公がななこに傅いている限り、特に用を成さぬ事実であるとは思うが、しかし敢えて真後ろの主人公を横に並ばせぬように歩いてしまう自分の意識が、逆にそれを証明している気がしてならない。
大通りから逸れ、車線も何も無い奥まった道へと入った。街路樹は消え、コンクリートの電柱の代わりに木製の古びたそれが並ぶ。道は東の空へと続いていて、突き刺さる曙光に目を細めながらその先を見遣ると、人影が確認出来た。また好奇の対象になることに少々気が塞ぎながら、両者の距離が縮まるのを待つ。
女のようだった。日除けの付いた乳母車を押している。赤子は体温調節が上手く出来ぬと聞くし、気温の上がらない内に外の空気を吸わせようとしているのだろうかと思う。その姿は周囲の垢抜けない街並みに反して優美で、一児の母とは思えぬ若々しさと、人妻特有の色香を兼ね揃えていた。マダムという言葉がよく似合う、そんな女性だった。
すれ違い様、鼻腔を擽る香気に一瞬ななこの心はドキリと揺れた。いけない、と自分を諌め、何事も無かったかのように振舞う事に努めたが、何かを忘れているような気がして、ふと立ち止まる。
女……?
美人……?
ハッとして振り返った時、数歩後ろを付いて来ていた筈の主人公の姿は既にそこには無かった。
更に数メートル後ろで、先の女性の手を取り、何やら真剣な表情で叫んでいる。きっとまた一目惚れしただの、結婚してくれだのと宣っているに違いない。女性の方は何が起こっているのかすら理解していないかのように見事なキョトン顔である。
その様子にななこは頭を抱えて嘆息する他無かった。どうして人の配偶者に手を出してはいけないという事も分からないのか、非常に理解に苦しむ。
仕方無く二人の下へと近付こうとすると、主人公は何を思ったか跪いた。そしてまだ乳飲み子と思われた赤子の手を取り、女性を見上げて言う。
「なら、娘さんを俺に下さい!」
ななこは一瞬眩暈を感じた後、呆れと怒りと羞恥と、その他計り知れぬ感情に一気に襲われて、気付いた時には全速力で駆け出していた。女性の前に辿り着くと、直ぐ様頭を下げる。
「すみませんでした! こいつ馬鹿なんです。ほんっとどうしようもない人間のクズでゴミで……。ほら、あんたも謝りなさい、よ!」
ななこは主人公の後頭部を掴んで地面に向かって押し落とした。
「ぐぇっ!」
道路のコンクリートは罅割れ、主人公の顔面はそこにめり込んだ。更に襟を掴んで、無理矢理上体を持ち上げる。
「ほら!」
「ちょ、ちょっと待て、俺はただ――」
「どーん!」
穴の開いた箇所に再び主人公の頭部を打ち付けると、耳が完全に隠れるまで地面の中に頭部は埋まった。
「っっっ……!!!」
声にならない声が上がるが、これ以上主人公に喋らせるべきではないと思い、そのまま後頭部を地面の内部に向かって押し込め続けた。
「どうか……虫螻にでも噛まれたと思って、忘れてください」
「え、ええ……」
関わり合いになりたくないと思っているのか、女性は引き攣った笑みを浮かべながらそう答えた。申し訳ない気持ちで胸が一杯になったが、ともかく、穏便に済ませて貰えた事に感謝した。
「ほら、行くわよ!」
最早もがく気力も失っている主人公の襟を掴んで地面から引っ張り上げ、そのままずるずると引き摺りながらその場を後にした。幸い近くの角を曲がった直ぐ先がクロサキ医院であったので、さほど重労働ではなかった。とりあえず人目につかぬように玄関の中へ主人公を放り投げる。
「このっ、ロリコン! ド変態!」
ゴミのように転がる主人公の身体を踏み付け、罵倒した。主人公は地面に伏しながらも、いい加減奇跡的に傷は癒え始めたようで、徐に顔を上げる。止めどなく顔面から流れていた血も凝固し、バリバリと剥がれ落ちた。
「俺はロリコンじゃねえ! ただ世界中の女を愛してるだけだ!」
「分別ってもんを持ちなさいって言ってるの!」
主人公はななこの脚を押し退けて立ち上がった。一呼吸置いて、些か冷静さを取り戻したように見えた。
「そんなもん、無えよ。好きなものは好きなんだからしょうがないだろ」
「あんたねえ……そんな考えが受け入れられる場所はこの地球上に存在しないのよ。いい加減現実を見なさい」
「なら、現実の方を変えるだけだ」
ああ、救いようの無い馬鹿がいる。本気で実現出来ると信じて言っているから始末に終えない。口で言って理解するような人間であったなら、疾うの昔に説諭して、今こんなところで頭を痛めていない。これ以上の議論の余地は無いと思う。
「とにかく、少なくとも私の目の届く範囲では、見境無く女の子に手を出して傷付けるなんて事、絶対にさせない」
主人公は会話を一方的に打ち切った事が不満なのか、訝しげな表情で押し黙る。
「なんだ、お前もしかして嫉妬してんのか?」
「は?」
「だったら心配要らないぜ。何があってもお前が一番だって事だけは変わらないんだからな」
ななこは鼻白んで大きく息を吐いた後、したり顔で油断する主人公の鼻柱を、どうせすぐ治ると高を括って、粉砕するつもりで殴り付けた。閉じかけていた傷口を抉られ、また主人公は鼻を押さえて蹲る。
「ね、強くなり過ぎても碌な事が無いでしょう?」
「全部お前の匙加減じゃねえか……」
「あー、動いたらお腹空いちゃったわ。ぼさっとしてないでさっさと朝ごはん用意しなさいよ。学校遅れちゃうじゃない」
主人公の言い分など聞くに値しない。
「……分かったよちくしょう」
「言葉遣い」
「分かりましたご主人様!」
やはり今日一日体力を保持するなど不可能だ。なら下僕に全て仕事を押し付けてしまえばいいと思う。その為だけに下僕は存在しているのだから。ついでに無意味で理不尽な無理難題の提案に思考を巡らすと、自然心は高鳴り、細かな憂鬱は全て吹き飛ぶ。
ななこはクロサキ医院の扉を開き、続く主人公の足音を聞きながら、ただいま、と呟いた。
  1. 2009/07/07(火) 21:21:22|
  2. 忍次創作
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

素晴らしいSSをいただきました

なのに長いこと更新できなくて申し訳ないです…。
おそらく8月まで更新はできそうにないです。

ともあれ、素敵SSありがとうございました!
  1. 2009/07/08(水) 01:23:14 |
  2. URL |
  3. にこ #7I7uLWho
  4. [ 編集]

きっと今までが異常過ぎたのですよ。
全裸正座待機しているので無理のないペースで頑張ってください。
  1. 2009/07/08(水) 03:33:58 |
  2. URL |
  3. 仮称 #-
  4. [ 編集]

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